本の紹介!柴田悠著『子育て支援が日本を救う (政策効果の統計分析)』

お世話になっております。Webコンサルタント秦智紀(はたとものり)です。

本日は以前、運営していたブログで紹介したことのある本のご紹介です。

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なぜ、この本の紹介を書くことになったのか

こちらの本も私が政治活動をしていた時にお世話になっていた方から、要約などを書いてくれないかと言われたのがキッカケです。

当該書籍のテーマの背景

本書は、「経済成長率」「労働生産性」「出生率」「子どもの貧困率」「自殺率」などの重要な社会指標に対して、子育て支援などのさまざまな社会保障政策がどのように影響するのかを、統計的に分析したものである。「主観的な印象だけでなく、できるだけ客観的なデータにも基づいて、政策を検討していただきたい」という著者の主張です。

書籍が行おうとする分析の視覚、ないし手法

本書では、統計分析で使う「データ」と「方法」について解説がされております。

まずは、「データ」についての解説ですが、本書の統計分析で使用するデータは、OECD28ヵ国1980~2009年の国際比較時系列データです。国際比較時系列データを用いることで、「どのような政策への予算規模を増やせば、その国の社会状況はどう変わるのか」を分析し予測することができます。国際比較時系列データは、専門的には「国レベルのパネルデータ」を呼ばれます。「パネルデータ」とは、「複数の特定個体(個人や国家など)に対して繰り返し観測して得られた値の集まり」(追跡調査で得られたデータ)のことです。本書では、政策の効果をより厳密に検証するために、主に数年以内の短期的な政策効果を分析しています。

次に「分析方法」ですが、本書における統計分析の方法として主に、現時点で最善の分析方法の一つである「一段階差GMM推定」という方法を用いております。本書が扱うような国単位のマクロなデータを使った統計分析の方法は、主に「経済成長の要因」を研究する分野などで応用されながら、発展してきました。具体的な分析方法については、本書の第2章に記載されております。

主な結論ないし主張

テーマの背景にも記載した通り、「経済成長率」「労働生産性」「出生率」「子どもの貧困率」「自殺率」について一つずつ確認をし、それが「子育て支援が日本を救う」のかどうかを確認したいと思います。

本書第2章の経済成長についての定義は「国内人口一人当たりの実質GDPの上昇率」としております。本書の「2・4 経済成長率の先行研究」には、「政府支出のなかには経済成長を促す支出(教育やインフラ投資)もあれば、経済成長を阻害する支出もある。また、政府支出が大きい場合には、クラウディングアウト効果(大きな財政支出をまかなうために国債を大量に新規発行すると、市中金利が高騰し、民間企業の資金調達が困難になること)によって、経済成長が抑制される」とイェイ氏らも主張しております。

第3章において、日本の財政が悪化している主な原因は、「社会保障以外の財政余裕」(税・社会保険料収入-社会保障支出)の減少にありました。この社会保障以外の財政余裕を増加しないことには、教育への支出を増やすことができないという観点から財政余裕を増加させる必要性があります。そのため、社会保障以外の財政余裕は、「高齢化の抑制」「失業率の低下」「経済成長」によって増加すると考えられます。「高齢化の抑制」による効果は主に「失業率の低下」による効果として説明でき、「経済成長」による効果は主に「労働生産性の向上」による効果として説明することができると考えられます。社会保障以外の財政余裕を増やして財政健全化をさせるためには、「高齢化を抑制する」「失業率を下げる」「労働生産性を高める」といった対策が考えられると、第3章では記載されております。

第4章において、財政健全化をもたらす要因の一つは、「経済成長率」(一人当たり実質GDP成長率)です。理論的には、「経済成長率」は、「労働生産性」「被用者人口比率」「労働時間」という三つの要素に分解できます。本章の分析から、「労働生産性の成長率」は、「女性の労働」「保育サービス」「失業給付」「労働時間の短縮」「高等教育支援」「起業支援」「個人所得税・社会保険料の累進性強化」によって高まり、「人口の高齢化」によって低くなると考えられます。したがって、労働生産性をより高めるためには、「女性の労働参加を促す」「保育サービ・失業給付・高等教育支援・起業支援を拡充する」「労働時間の短縮を促す」「個人所得税・社会保険料の累進性を強化する」「高齢化の抑制」といった対策が考えられます。「保育サービ・失業給付・高等教育支援・起業支援を拡充する」「労働時間の短縮を促す」という対策は、「子育てと両立しやすくなる、転職しやすくなる、学業と両立しやすくなる、起業しやすくなる、短時間勤務をしやすくなる」ということを意味で、「より多様な働き方の中から、自分により合った働き方を、より自由に選べるようになる」ということを意味し、より適材適所な人材配置(雇用の流動化)が進み、社会全体の労働生産性が高まる。雇用の流動化を促す前提として、「失業給付・就労支援などのセーフティーネットの充実」や「同一価値労働同一賃金といった公正な労働環境の整備」が必要です。また、「高齢化を抑制する」ためには、出生率を高める必要があると、第4章では記載されております。

第5章において、「女性の労働参加」は「社会の労働生産性」を高めるという観点として、「女性の労働参加」は、「脱工業化」「公教育の拡充」「保育サービスの拡充」「移民の受け入れ」によって促されると考えられております。したがって、女性の労働参加を促すためには、「公教育・産休育休・保育サービスを拡充する」「女性の労働移民をより多く受け入れる」といった対策が有効であり、これらの対策は「男性多数」「日本人多数」の職場・労働市場において、「人材の多様化」をもたらします。「人材の多様化」は、その職場や労働市場全体の労働生産性全体を高めると、第5章では記載されております。

第6章において、「労働生産性の成長」をもたらすことで社会保障以外の財政余裕を増やす対策のうち、「高齢化を抑制するために出生率を高める」という対策の検討が必要であり、「どのような対策を実施すれば、出生率が高まるのか」を統計分析によって検討します。分析結果から、先進諸国において、出生率を引き上げるには、「保育サービスの拡充」と「移民の受け入れ」といった対策が有効とのことです。しかし、日本では「移民受け入れ」は有効ではなく、「移民人口率が上がると出生率が上がる」という傾向は見られなかった。労働移民の受け入れは、「労働人口(納税者)を増やすため」「職場における人材の多様性を高めるため」「人道的な意味で難民を受け入れるため」と、第6章では記載されております。

第7章において、OECD諸国のほとんどでは、1980年代半ば以降、自殺率は下がる傾向にありますが、日本と韓国だけはその傾向から外れております。その背景には、「貧困」と「孤立」であると考えられております。「貧困や孤立といった社会的状況によって否応なく不本意に自殺に追い込まれる人」が増え、そしてその社会的状況はとりわけ「中年男性」や「若者」で悪化したと考えられるとのことです。分析結果から、自殺率を下げるには、「職業訓練」「結婚支援」「女性就労支援(保育サービス・産休育休などが有効である)」「雇用推奨」が有効であると、第7章では記載されております。

第8章において、子どもの相対的貧困は「機会の不平等」を発生させ、さらには「才能のある子どもがその才能を発達させて社会貢献する機会」を減じてしまうため、社会全体にとっても大きな損失があるとのことです。そのため、政府は「機会の不平等」を縮小させるために、子どもの貧困を減らす必要があります。分析結果から、子どもの貧困を減らすには、「児童手当」「保育サービス」「共働き」「ワークシェアリング」「失業給付」「離婚予防(結婚でのミスマッチを防ぐ、DVを予防するなど)」が有効だと考えられております。長期的に見れば、保育サービスは「子どもの貧困の親子間の再生産」を減らし、「社会保障の長期的な投資効果」を高め、保育サービスが「子どもの貧困の予防」に貢献する総合的な効果は、短期的効果よりも大きいと考えられるとのことです。さらに、保育サービスは社会保障の投資効果を高めることにも貢献すると、第8章に記載されております。

批判すべき点、今後の課題

「経済成長率」「労働生産性」「出生率」「子どもの貧困率」「自殺率」について統計分析をし、「子育て支援が日本を救う」のかどうかを一つずつ確認しました。最初の経済成長の部分ですが、教育やインフラ投資にかかる政府支出を増やせば、経済成長率を促せるという根拠をイェイ氏らの先行研究の発表で済ませているので、物足りなさを感じました。

第5章、第6章の移民受け入れによる効果についてですが、この章では女性移民の受け入れによって、労働生産性が高まるという効果面が記載されておりますが、移民受け入れのコスト面が記載されておりません。社会的、政治的、経済的側面から見て、移民受け入れのコストも鑑みる必要性はあります。近年でもシリア難民がヨーロッパにおいて社会問題化されましたが、移民と難民は定義上の違いはあるにせよ、移民や難民の最大のコストは社会保障費の増大とも言われております。第3章において、社会保障以外の財政余裕の減少が教育投資の減少に繋がっていることは書かれており、日本の社会保障改革や労働市場改革がなされてから移民の受け入れ問題の是非を問うべきだと考えます。

第11章の「11・2 残された課題」において、本書では主に数年間以外の短期的な政策効果を優先して分析しております。5年単位、10年単位の中長期的な効果の検証として(公的教育支出が出生率に与える中長期的効果について)など。今後の課題として、経年パネルデータを5年間や10年間の平均値に変換して、新たなパネルデータを作成、中長期的な政策効果も分析すべきとのことです。

総括、ひとことで言えばどんな書物か

第2章から第8章まで「経済成長率」「労働生産性」「出生率」「子どもの貧困率」「自殺率」について一つずつ確認をし、それが「子育て支援が日本を救う」のかどうかを確認してきました。必要な政策として、以下のようなキーワードが出てきました。
・失業率の低下
・女性の労働参加
・保育サービスの拡充
・失業給付
・労働時間の短縮
・高等教育支援
・起業支援
・個人所得税・社会保険料の累進性強化
・職業訓練
・結婚支援
・女性就労支援(保育サービス・産休育休などが有効である)
・雇用推奨
・児童手当
・共働き
・ワークシェアリング
・離婚予防(結婚でのミスマッチを防ぐ、DVを予防するなど)」

これらの政策は、国や地方に関わらず対策が可能なものもありますので、キーワードとして出てきたもの一つずつ現実の政治の現場で費用対効果を鑑みて政策提言することが求められると考えられます。

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